いまさら聞けない 歯科インプラント

いつまでもつのか? 世界最初のチタン患者は40年以上

「人工的に作られたものだから、すぐに壊れるのではないか? 」――。歯科インプラント(以下、インプラント)をそう考えている人がいるが、必ずしも正しくない。
自由診療歯科医で八重洲歯科クリニック(東京・京橋)の木村陽介院長に聞いた。
インプラントはインプラント体(人工歯根)、アパットメント(支台)、上部構造(人工歯冠)の3つからなり、人工歯根はチタン、支台はチタンやジルコニアなど、人工歯冠はセラミック、ジルコニア、貴金属などで作られる。
「人工歯冠は?み合わせが悪かったり、長年使っているうちに欠けたり、外れることもあります。しかし、骨にきちんと結合している人工歯根や支台が壊れることはまれです。インプラント用のチタンの強度は強く、半永久的に持つことが実証されています」インプラントの歴史は古く、生理的に機能していたと思われる世界最古のインプラントは、マヤ文明時代と推定される女性の前歯から発見され、貝殻で作られていた。 現在のように人工歯根にチタンが使われるようになったのは1952年のこと。スウェーデンのブローネマルク博士が、血液循環の研究のためにウサギの骨に埋め込んだチタン製器具が、骨と結合して離れなくなったことを偶然発見したからだ。その後、ブローネマルク博士はチタンの生体親和性に着目。13年間研究した結果、骨と金属が一体化することを意味する「オッセオインテグレーション」が完成したという。
ブローネマルク博士は65年に、歯をすべて失った患者の下顎に4本のチタン製インプラントを4本埋入。その1カ月半後に人工歯冠を装着して咬合治療を行った。
世界初のオッセオインテグレーション・インプラントは、臨床患者が亡くなる2007年1月までの41年間、体のなかで機能し続けたという。このオッセオインテグレーション・インプラントが10年以上機能する率は96%以上ともいわれ、現在のインプラントの基礎となった。日本でインプラントが実用されたのは1980年代のこと。初期段階ではインプラント体の材質に人工サファイアやセラミックなどが使用されたが思うような結果が出ず、チタンに落ち着いている。
「一般的に金属は表面に被膜を形成する性質をもっていますが、チタンはとくに酸化しやすく、酸化被膜が金属表面を覆い、それが非常に安定していて腐食を防ぎます」ただし、天然歯と同じで、歯磨きや定期検診など患者の日頃のケアに大きく左右されることを忘れてはいけない。

※このコラムは、院長 木村陽介が、日刊ゲンダイで連載したものを掲載しております

コラムシリーズ
いまさら聞けない 歯科インプラント
01 本当に怖いのか?①
02 本当に怖いのか?② 治療は痛くない
03 値段差は何の差?① 材料、設備
04 値段差は何の差なのか?② 実績、肩書は信頼できるのか
05 治療ができる人 できない人 糖尿病・高血圧でも普通の生活が送れていればOK
06 いつまでもつか? 世界最初のチタン患者は40年以上
07 治療後はどんなケアが必要か? 定期的な検診が重要
08 治療のタイミング? 噛めなくなったころ・・・
09 大学病院の方が安心か? 最後まで同じ歯科医師が担当しないかもしれない
10 義歯ではダメなのか? よりおいしく物が食べられる
11 歯科医師の選び方 口コミが一番