いまさら聞けない 歯科インプラント

治療ができる人 できない人
糖尿病・高血圧でも普通の生活が送れていればOK=喫煙者は成功率低下

歯科インプラント(以下インプラント)は、顎の骨が完成する16~18歳過ぎから治療が可能になる。80歳過ぎでも問題ない。歯がすべて抜けている人でも治療可能だ。
ではどんな人はできないのか?歯科医向けのインプラントセミナーの講師も務める自由診療歯科医師で「八重洲歯科クリニック」(東京・京橋)の木村陽介院長に聞いた。
「顎の骨が十分成長していない子供はNGです。また歯周病や長期の総入れ歯使用などにより、インプラントを埋入するのに十分な顎の骨がない人も難しい。その場合は、歯周病を治療をしたうえで、インプラントの土台となる骨を再生させ、治療に必要な骨量にする治療が必要になります」
では、糖尿病、高血圧、骨粗しょう症などの持病がある人はどうか?
「高度な全身疾患がなく、妊娠しておらず、基本的に普通の生活が送れている人であれば基本的に治療は可能です。糖尿病は血液中のブドウ糖濃度が高いため血液がもっている免疫力や抵抗力が働きにくく、インプラント治療に時間がかかる場合もあります。仮に難しいケースでも、血糖のコントロールをしっかり行うことで治療が可能になる場合もあります。かかりつけの医師や歯科医師に相談するとよいでしょう。防止のための血液抗凝固剤を使用している人でも、休薬することなくインプラント手術が受けられます」
高血圧の人も降圧剤などで制御できている人であれば、通常は問題ない。閉経後の女性に多い骨粗しょう症も骨とインプラントの結合に時間がかかる場合もあるが、通常は治療可能だ。金属アレルギーの人はどうか?
「インプラント治療に使われている金属はほとんどがチタン製です。チタンは骨と結合し、長期にわたり安定することが証明されていて、歯科医療以外にもひじや膝の人工関節としても使われています。現時点では最も安全なインプラントの材質で、金属アレルギーの心配はないと考えられています」
喫煙者でも治療はできるものの、インプラント治療の成功率や耐久年数が低下することは押さえておきたい。
「喫煙している人はそうでない人に比べて3倍程度インプラント治療の失敗率が上がるといわれています。また、たばこに含まれるさまざまな化学物質が治療期間痛みや腫れの長さにつながります。特に上顎のインプラントは喫煙の影響をより強くうけやすい。喫煙者は歯周病になる可能性が高いので、耐用年数も低くなってしまいます。インプラントも普通の歯と同じように、歯槽骨が細菌感染してしまえば、歯が抜け落ちてしまうのです」
本数を減らせば、これらのリスクは低くなる。インプラントが骨に接合する期間だけでも禁煙できれば、インプラント成功の確率はグッと高くなる。

※このコラムは、院長 木村陽介が、日刊ゲンダイで連載したものを掲載しております

コラムシリーズ
いまさら聞けない 歯科インプラント
01 本当に怖いのか?①
02 本当に怖いのか?② 治療は痛くない
03 値段差は何の差?① 材料、設備
04 値段差は何の差なのか?② 実績、肩書は信頼できるのか
05 治療ができる人 できない人 糖尿病・高血圧でも普通の生活が送れていればOK
06 いつまでもつか? 世界最初のチタン患者は40年以上
07 治療後はどんなケアが必要か? 定期的な検診が重要
08 治療のタイミング? 噛めなくなったころ・・・
09 大学病院の方が安心か? 最後まで同じ歯科医師が担当しないかもしれない
10 義歯ではダメなのか? よりおいしく物が食べられる
11 歯科医師の選び方 口コミが一番