いまさら聞けない 歯科インプラント

値段差は何の差?① 材料、設備

歯科インプラント(以下インプラント)の中には「1本〇万円」という激安なものもあるが、通常は1本(インプラント+人口歯冠)で数十万円程度は覚悟する必要がある。
費用の差はどこからくるのか?歯科医向けのインプラントセミナーの講師も務める自由診療歯科医師で「八重洲歯科クリニック」(東京・京橋)の木村陽介院長に聞いた。
「まず、インプラントの値段の設定の仕方を説明しましょう。インプラントは保険診療と違って歯科医師が自由に値段を設定していいことになっています。
そのため、歯科医師はインプラントに使う材料費に加え、治療必要な時間当たりの人件費や設備費、衛生管理費、さらに利潤を上乗せして決定します。とはいえその総額にはおおよその目安があります。
そこで大学の同期の友人、所属学会の知人、使用するインプラントの営業マンに相場を聞いて参考にします」つまり、歯科医師の出身大学や所属学会、勉強会、」あるいは使用するインプラントメーカーごとに価格が決まる可能性が あるといううわけだ。
では、なぜ、激安インプラントが存在するのか?
むろん、治療に使うインプラント自体に差がある場合もある。「そういう人間関係に頓着しない歯科医師もおられるのです。現在、日本には30種類以上のインプラントシステムが出回っています。基本的にインプラントの良し悪しインプラント体が顎の骨としっかりとくっつき、長時間安定できるか否かによります」どのメーカーのものであれ、現在のインプラント体の表面には、凹凸や溝つけることで表面積を増やすなどしてより骨との密着度を上げる工夫がなされている。もちろんアレルギーなどの免疫反応や感染症が出にくい生体親和性のある材料を使うことが求められる。「それならば老舗で販売実績の多い海外ブランドのインプラントシステムがいいか、というと必ずしもそうではありません。 インプラントの治療技術は日進月歩で進化しています。新技術はすぐに真似をされ、さらなる技術開発が進んでいます。ブランドにあぐらをかいているメーカーのものがいいとはいえないのです」
中には、感染症対策と称して、大学病院の外科手術が行われるような大掛かりな無菌室を設けているところもある。しかし、それは必須条件とはいえないという。
「患者さんごとに使い捨て手術着をまとい、関与するスタッフ全員に徹底した衛生管理と教育行われているのが理想でしょう。しかし、口の中には多くの常在菌がいて、決してクリーンではありません。無菌室でなければインプラント手術ができないとは思えません。インプラント専用の部屋は必要かもしれませんが、それ以上に口の中に直接出し入れする器具などの衛生管理が万全であることが大切だと思います」

※このコラムは、院長 木村陽介が、日刊ゲンダイで連載したものを掲載しております

コラムシリーズ
いまさら聞けない 歯科インプラント
01 本当に怖いのか?①
02 本当に怖いのか?② 治療は痛くない
03 値段差は何の差?① 材料、設備
04 値段差は何の差なのか?② 実績、肩書は信頼できるのか
05 治療ができる人 できない人 糖尿病・高血圧でも普通の生活が送れていればOK
06 いつまでもつか? 世界最初のチタン患者は40年以上
07 治療後はどんなケアが必要か? 定期的な検診が重要
08 治療のタイミング? 噛めなくなったころ・・・
09 大学病院の方が安心か? 最後まで同じ歯科医師が担当しないかもしれない
10 義歯ではダメなのか? よりおいしく物が食べられる
11 歯科医師の選び方 口コミが一番