CGFはフィブリンとフィブリノーゲン

フィブリンの主な役割は、出血を防止するための止血システムであるが、細菌などの異物が侵入した際に炎症反応としてブラジキニンやヒスタミンにより血管透過性が上昇すると血漿中のフィブリノーゲンが組織に漏出し、炎症を生じて血液凝固を引き起こし、侵入した異物を拡散させず難溶性繊維素の中に封じ込める効果と局所的な血流阻害作用により細菌の拡散を防ぐ役割を演じていると考えられている。
つまりフィブリン難溶性繊維素によって、口腔内の唾液・細菌・外科処置によって産出した細胞片や細胞内内容物・骨片などの異物反応起因物質を内包可能である。
これがCGFによる抗感染・抗炎症(抗疼痛・抗腫脹)作用である。
フィブリンは、組織再生の足場材にもなる。

菲薄な上顎骨に対するレシピ

待時法での菲薄な上顎骨の洞膜の拳上は、ラテラルからのアプローチの方が簡単で確実。

•CGFを使用する場合は、洞膜が破れるリスクを許容できるため、骨の開窓範囲が小さくできるため、侵襲も少ない。
•ラテラルからは、上顎洞の中が見えるため、処置が早く行え菲薄な上顎骨に対するレシピで確実。
•クレスタル(バーティカル)からのアプローチでもフラップは必要。(開窓部の副鼻腔と 口腔内を遮断するため、歯槽粘膜の切開部の下に骨の術部が来ないようにする。上顎洞底の骨が薄い場合は、手術による侵襲の程度は、ラテラルとほとんど変わらない。)
•フラップする場合、人工骨を使用しないので骨の開窓部位より3ミリ程度離すだけで十分です。粘膜の切開部位の直下に骨の開窓部がないようにします

ピエゾのソウチップを使用して開窓する場合、4辺のうち近心と下底の最低2辺にべベルをつけると開窓した骨を後でぴったり元に戻せる。その部位で安定させることが可能。

•開窓骨を元に戻した方が、洞内の骨新生が早くなります。
•薄い骨でも、べベル(骨を斜めに切開する)をつきえると元の位置で安定します。

開窓後、ピエゾのラッパ状チップにて、洞膜の剥離の起始点を作る。

• 洞膜剥離の一番難しく、破れやすいのが、最初の剥離の起始部です。
• ピエゾのラッパ状のチップは剥離の起始点が容易で安全に剥離できます。
• チップで膜を押すのではなく、チップ辺縁部を骨にあてたまま這わせるようにして剥離します。(卵の薄皮で経験してみること)

膜が開窓部周囲3ミリほど剥離できたら、洞膜剥離用のヘラ(剥離子)を使用して口蓋側を大目に剥離する。(15ミリ程度、口蓋側の洞膜を拳上する)

• 起始点ができれば、剥離はヘラのほうが能率が良い。
• 近心方向などの見えにくい部位は、自信がなかったら時間がかかっても、ラッパ状のチップで少しずつ剥離したほうが良い。(これも卵の薄皮で経験してみてください)
• 口蓋側は洞膜を大目に剥離した方が良い。(口蓋側は動脈などないため、安心して剥離しやすい。)
• 口蓋側の洞膜を上部まで剥離する場合、痛みを感じさせることがあるため、口蓋側にも浸麻をしておいた方が良い。頬側も上部まで浸麻しておく。

洞膜を挙上した部位に全体にCGFを填入する。(この時、アテロコラーゲンであるテルプラグを混入させると骨の新生が早いように経験的には感じている。特に洞底の頬舌幅が広いとき)

・コラーゲンは、フィブリン以上に組織新生(再生)の足場材として有効です。
・コラーゲンだけだと血餅が大きくなり感染のリスクが残ります。主に填入するのは、CGFです。(洞底の頬舌径が広い場合は、CGFだけでは再生骨量が少なくなる)

開窓部にはテルプラグを留置し、除去した骨片を戻す。固定操作は、必要なし

• 骨片の内面にコラーゲンがあると、骨への血液供給が早く、骨の吸収が起こりにくい。

切開部縫合後、PRPあるいは、AFGを注射器にて切開部周囲の粘膜に注入すると、切開部の治癒が早く、腫脹や疼痛が発生しにくい。瘢痕収縮の予防

• CGFを使用してもサイナスリフトを行った場合、2日後に腫脹することがある。
• 人工骨などの固形物を使用しないので、外見から腫脹が認識できることは稀であるが、腫脹を予見することは困難であるので、腫脹の可能性を前もって伝えておくのが望ましい。

骨造成から約3ヶ月後(既存骨が3ミリ以上あれば、2ヶ月後も可能)インプラントの稙立を行う。

• この時再度サイナスリフト法(ラテラル)で行うかソケットリフト法(クレスタル)で行うかは、術部の条件によって判断します。しかしクレスタルアプローチを行って、十分に洞膜の挙上が行えないような場合や、洞膜の破裂が疑われるような場合は、直ちにラテラルアプローチに移行します。

クレスタルかの判断に迷うときは、まずソケットリフト法でアプローチし、確実性が得られないような場合に、直ちにサイナス法に移行するというスタンスを推奨します。

• 植立するインプラントが一本の場合は、内部注水チップ(HPISE)で大きく洞膜を拳上しようとすると破れるリスクが大きくなります。
• 複数の場合は、内部注水チップ(HPISE)で比較的大きく洞膜を拳上できます。
• 洞内に隔壁がある場合は、内部注水チップの水流と洞膜の剥離方向が平行なため、洞膜の破れるリスクが少なく洞膜拳上が容易です。

洞膜の厚みや骨からの剥がれにくさは、それぞれなので、前もって予測することは困難。

• 術前審査のCTで、洞底粘膜が肥厚して見える場合、拳上すべき洞膜は、最下部に1層ある骨膜だけです。洞膜が厚く見えても破れにくいということは決してありません。最下層の骨膜が敗れると洞膜が破れたことを意味します。
• 洞膜が厚く肥厚している場合は、内部に膿が貯留している場合があり、膜を破らないように特に注意が必要。CGFを入れてもそこに血液循環がなければ、骨は再生しません。

待時法で植立されたインプラントにオンロード(咬合)させるのは、アパタイトフェースで2~3か月後。一度目の手術からは、4~6か月後になります。

• 術前の既存骨の厚みが1ミリ程度の場合、待時法で作成された骨のほとんどが新生骨であり、骨密度もなく、皮質骨と海綿骨の分化も未分化な状態ですので、少なくとも最初の1カ月は仮歯でロードさせる。
• 上顎歯槽骨が吸収しているケースでは、歯根歯冠比が悪い場合が多く、この場合には太く長いインプラントを植立する必要があります。そのためにも口蓋側の洞膜は十分に上部まで剥離しておき、必要な骨を造成させておく。

填入するCGFは、作製予定の洞底部の骨幅より多く入れる。

• 洞底部の骨幅をCGFで厚くしようとするときは、目標の倍以上出来れば3倍ほど洞膜を挙上してCGFを填入する。
• 洞底部が広い場合は特にCGFを多めに填入しなければ十分な骨幅ができないので、CGFが足りない場合はコラーゲン(テルプラグなど)を混ぜるのは合理的です。この場合も決して人工骨のような固形物は混ぜてはいけません。

洞膜の剥離は、鼻腔側を多めに剥離挙上する

• 特に術前の既存骨の厚みが1ミリ程度しかない場合、洞内の鼻腔側を多めに剥離挙上するのが、骨幅多く作るために合理的です。
• 洞内の頬側を剥離する場合は、洞膜が破れるリスクが高いことと、動脈に十分注意が必要です。

初めてのひとは、1度ぐらいはサイナスリフトを見学してから始めるべき。

• CGFやコラーゲンを洞内に入れるときは、歯に触れて汚染されないように十分注意しましょう。
• 術前には、全顎の歯面、歯頚部、歯間部の機械的清掃を、可能なら術者自身で徹底的に行いましょう。(薬液をつけた綿球と歯間ブラシを使用します)
• 菲薄な上顎骨に対する難症例がリスクの少ないCGFを使用した手術で、簡単な症例に移行できることは、患者さんにとっても歯科医院にとってもメリットは大きいと思われます。当院の場合、サージボーンとCGFによる経済効果は、計り知れないものがありましたし、当院の評判にも大きく貢献してくれました。評判は非常に大切です。
• CGF療法は、人工骨を使わないので、最悪失敗しても十分な骨が出来なかったという程度です。炎症や不快感が持続することはありません。
• CGFやコラーゲンだけを使用した場合は、人工骨を除去するための手術などは必要ありません。手術しなければ良かったなどと患者さんが思うことはなく、最悪十分な効果がなく再手術が必要になったとしても、再手術を患者さんに求めやすい。
• CGF療法では、抗血液凝固剤服薬(バイアスピリン・ワーファリンなど)は、原則中止しない。

PRPやAFGは、軟組織、特に粘膜の創傷治癒に有益。

PRPやAFGの有益性は、美容外科や皮膚科で既に実証済みです。

自分の目尻か豊齢線に注射し、一度はぜひ体験してみましょう。(講習受講後)
角化歯肉に、PRPやAFGと注射するときは、注射筒と針が一体になったものを使用しないと強い圧によって針が外れてしまいます。
術部周辺にPRPを注入すると粘膜の治癒が早く、感染予防にも有効である可能性があり、疼痛も抑制されているように感じています。切開部の骨と粘膜の退縮(瘢痕収縮)予防効果も十分にあります。

CGFで洞膜拳上後の注意事項

・拳上した洞膜が下がることを予防する必要がある
・副鼻腔に圧力が加わると、拳上した洞膜が下がってしまう
・CGFを使用しての上顎洞拳上術後の注意事項としては、手術側でしばらく鼻をかまないようにすること
・マラソンなどの激しい運動も呼吸が荒くなってしまうので、控えていただく
・この2つを守らなかった場合は、増骨量が少なくなる

CGFを膜として使用する場合の注意事項

CGFは、表面粘膜が裂開しても感染の恐れは少ないが、露出面は粘膜の再生が遅れる。長期間粘膜に窪みができる
裂開の可能性がある場合や、露出部に使用する場合は、サイトプラストの方が適している。
サイトプラストとCGF両方を使用するときは、サイトプラストとCGFの間にコラーゲン(テルプラグ)を入れてCGFとサイトプラストが直接触れないようにすることが望ましい。
従って、抜歯窩や裂開部の被覆(GBR)は、上からサイトプラスト・テルプラグ・CGFの順番が望ましい。
この順番を守れば、サイトプラスト面に沿って早期に骨を再生可能で、粘膜のくぼみも起こらない。

HPISE(洞膜剥離用) 内部注水チップ

HPISEチップだけでは時間がかかる
ドリルで近くまであける
ラウンドチップで洞底を貫通し、洞底骨の厚みの確認。
HPISEチップで洞膜剥離(水流方向と膜に少しでも角度をつけるようにする・洞膜と垂直にしない)
HPISEで貫通後は、スイッチONの状態ですぐに抜く。(OFFの状態だと引っかかって抜きにくい。)
チップの再注入は、洞膜が破れる可能性が高い。安易に再注入せずに、洞膜の拳上量を測定してからにする。
貫通後のチップの再注入は、ドリルで径を広げてから、なるべく洞膜に垂直にならないような角度で使用する。
2か所以上貫通するときは、水圧が逃げるため洞膜が破れにくい。この場合はドリルで径を広げなくともよい。
洞底が斜面であったり隔壁があった方が、水流と洞膜が平行になるため、安全に洞膜剥離できる。(隔壁がある方が剥離しやすい。これがHPISEチップの特徴)
膜が拳上されているので、安全に再びドリルで目的径まで拡大し、必要ならさらに内部注水用チップで洞膜の拳上を行う。(CGFを入れてオステオトームも有効)